鳥取和牛の認定基準は「鳥取県内で肥育された肉質等級が3等級以上の黒毛和牛種」としています。
牛肉は両親から受け継ぐ「素質」と餌や飼い方などの「環境」の影響により、おいしい肉になるかどうかが決まります。和牛が他の肉牛と決定的に違うのは、霜降りの入る遺伝子を持っていることです。
鳥取和牛の脂肪は、低温でも溶け出す不飽和脂肪酸を多く含み、中でもオリーブ油と同様に健康に良いといわれているオレイン酸が豊富なのが特徴です。
鳥取和牛のおいしさは、和牛産地としての伝統と良質な水に恵まれた風土、そして生産農家こだわりの肥育技術がその源となっています。
鳥取和牛は、日本四名山である国立公園大山の麓の澄んだ空気や伏流水などの恵まれた自然環境で育った和牛で、旨味成分であるオレイン酸の含有率が高く、赤身と脂のバランスが絶妙です。融点が低く甘い脂はまろやかで、突き抜ける風味と、とろけるような繊細な舌触りが特徴です。
また、鳥取県は全国星空継続観察で何度も日本一を獲得するなど、県内各地で天の川や流れ星がきれいに見え、息をのむほど美しい星空を持ち、魅力溢れることから「星取県」と呼ばれています。
鳥取県の和牛飼養頭数は全国的に見て、その割合はわずか1%以下にすぎず、決して多くはありません。しかし、その一方で鳥取県は江戸時代から続く和牛の産地として知られています。
その理由のひとつに、中国山地では古くから砂鉄が豊富に採れたことから、これを原料とする蘊製鉄が盛んに行われ、運搬用に牛が必要とされてきたことが挙げられます。さらに西日本屈指の霊峰大山は、古来より霊山として人々の信仰を集めており、平安時代に基好上人が「大山寺の地蔵菩薩は牛馬守護の仏である」と唱え、お守り札を施したことから大山寺への参拝者が牛馬を連れてお参りすることが一般的になったといわれています。参拝者の間で互いの牛馬を比べては交換するようになり牛馬市がはじまり、江戸時代には広島県久井の牛市、福島県白河の馬市と並ぶ日本三大牛馬市として隆盛を極めました。
また、明治末期には外国種の導入が奨励され、和牛との交配が進められるなか、大正9年に全国に先駆けて和牛の登録事業に着手し、血統登録と改良目標に基づく本格的な育種改良を開始しました。その後大山牛馬市は、鉄道の発達などの影響で昭和12年の春にその幕を閉じますが、登録事業はその後も和牛の品種改良に大いに活用されて、今、世界が注目する和牛誕生への礎となりました。
日本各地のブランド牛や銘柄牛と呼ばれる和牛の多くは、ルーツをたどると「気高号」に行き当たります。1966年に岡山県で開催された第一回全国和牛能力共進会(5年に1度開催される和牛日本一を競う審査大会)において1等賞の栄冠に輝いたのが鳥取県の雄牛「気高号」です。
この発育・資質ともに良好、かつ大柄で産肉能力に優れた名牛は、生涯9,000頭以上の子孫を残し、現在のブランド牛の始祖として和牛界の歴史に不朽の名を残しています。
鳥取県では、現在もその優れた遺伝子が脈々と受け継がれ、白鵬85の3、百合白清2など、優秀な後継牛が誕生しています。